「名所旧跡巡り同好会報告」

麻布の坂道と大使館・恵比寿ガーデンプレイスを巡る

                          三瓶英雄(新十回卒)

 平成15年の川越探訪を皮切りに毎年2回着実に実施して以来、節目の20回目となる今回の名所旧跡巡り同好会行事は、都内のタウンウオークをと考えていたところ葛岡さん(新十一回)から自身が所属する会で実施した麻布の坂道と大使館を巡るコースを推奨されて一目で気に入り、これを中心に計画して葛岡さんに案内をお願いした。
 肌寒く空模様も気遣われる10月19日JR田町駅に集合、常連のUさん約1名が未着で連絡が取れないまま27名で元気に出発した。

 最初に訪れたのは第一京浜沿いの三菱自動車ビル前に在る「勝・西郷会見の地碑」ここは幕末、官軍による江戸城総攻撃が行われる予定の前日に官軍参謀西郷隆盛と幕府陸軍総裁勝海舟との最後の会談が持たれた薩摩藩の蔵屋敷跡。次いで薩摩藩上屋敷が在った近くのNECビルを経由して三田地区に入り、最初はイタリヤ大使館。
ここは伊予松山藩松平家の中屋敷跡で、赤穂義士の大石主税・堀部安兵衛・不破和衛門・大高源吾ら10名が切腹したところ。
高い塀に囲まれた敷地内に広い日本庭園があることで知られる。







 長い塀沿いを辿り次のブロックに進むと豪華な門構えと広大な敷地の三井倶楽部。ここは大正2年、三井財閥三井家の迎賓館としてイギリスの建築家ジョサイア・コンドルによって建てられ、現在は三井グループ各社のVIP接待所として利用されている。薩摩藩島津家と備前藩鍋島家の屋敷跡、後方の庭園は会津藩下屋敷の一部で、ここに平安初期の武将源頼光の四天王のひとり渡辺綱の産湯の井戸がある。近くの龍生院が綱の生誕地で前を通る綱の手引き坂は乳母が綱の手を引いて通った坂であるという。



 次のブロックは一転して近代的な建築のオーストラリア大使館で蜂須賀侯爵屋敷跡見学後、両ブロックの間の坂道を下り児童公園で小憩、ここで在宅のUさんにやっと繋がったが、“あれえ!明日では無かったっけ?”に脱帽。

この後その一部が会津藩下屋敷跡である慶応大学三田校舎を左手に中等部の敷地を右手に見ながら綱坂を進み、小ぶりなマンションの一画に構えるハンガリー大使館を経由してさらに三の橋に進み麻布地区に入る。

 最初に訪れたのは曽渓寺。墓地には赤穂義士のひとり寺坂吉衛門の墓がある。元禄15年、討ち入りの成功を主君の室揺泉院と大石内蔵助室に知らせに奔り江戸に戻って自首したが不問とされ、江戸で生涯を終え埋葬されている。

次いで四の橋から薬園坂を登る途中にイラン大使館が在る。ペルシャ語の国名と三色に国章が混じっている国旗が異彩を放っている。小公園で小憩後、奴坂を下りかつ登ると一角をフィンランド・アルジェリア・パキスタン各大使館が占める。白が基調でゆったりした敷地のフィンランド大使館の正面にアルジェリア大使館のアラビア語の国名とイスラム特有のモザイク模様の壁が目立つ。パキスタン大使館はウルドウー語の国名とKに白抜きの半月と星の国旗だ。

 新坂・青木坂を進むと広いフランス大使館の敷地が続きここは戸沢上総介屋敷跡という。この辺りは立派な住宅が続き外国人居住者が多いらしく、路上で外国人の運転する車や可愛らしい子供たちが遊んでいたりカップルが腕を組んで歩く様子などが眺められ、さながら外国に居る趣だ

 ここから大石内蔵助が亡君の室揺泉院に別れを告げる「南部坂雪の別れ」で知られる南部坂を登り、ドイツ大使館に向かう。塀の壁面に東日本大震災を見舞うメルケル首相のメッセージや脱原発を推進する計画などが掲げられている。

 南部坂を登り切って隣接する有栖川宮記念公園に入りさあ昼食休憩、ここは南部坂の名に因む盛岡藩南部家の中屋敷跡で、明治29年に有栖川宮家の所有となったが、同宮家が絶えたため東京市に寄賜され公園として一般に公開されている。園内にある巨大な騎乗の軍人像は有栖川宮熾仁親王。幕末、公武合体政策により将軍家茂に嫁いだ皇女和宮はこの人の婚約者であった。

この像の前で集合写真を撮り、さあ午後の部のスタート、園内の日本庭園のあるコースを半周して中国大使館に向かう。
近ずくと日中関係の険しさを反映してか機動隊による正面警備のみならず周辺の要所要所に多くの機動隊車・隊員の配置が目立ち異様な緊張感があり、写真撮影も自重して全員足早に門前から遠ざかる。
そして計画外のラオス・ギリシャ・ルーマニア大使館をオプションで見学してから方向転換して北条坂、スイス大使館を経て広尾の通りに出ると、商店街の路上やカフェに多くの老若男女・外国人で賑わっており、人込みをかき分けて進むと一転して人の気配もない祥雲寺だ。



 ここは新年1月から始まるNHK大河ドラマの主人公で豊臣秀吉の側近名参謀として活躍した黒田官兵衛の嫡子で筑前福岡藩初代藩主黒田長政の巨大な墓の他、秋月藩黒田家、久留米藩有馬家等諸大名の巨大墓石群があり見学した。


そしていよいよ最後のコース恵比寿ガーデンプレイスに向かう。
ここはサッポロビール工場跡地に平成6年開業したオフィスビル、三越などの商業施設、レストラン、美術館、映画館、集合マンション等で構成される複合施設。
サッポロビール本社内にあるエビスビール記念館をじっくり見学するフリータイムを設けたが、見学もそこそこにビールの味わいを優先する人も見受けられた。

そして恵比寿駅前に向かい近くの居酒屋で打ち上げ。程よく疲れたお腹にアルコールが染み渡って、いつもながらご機嫌な盛り上がった懇親会になった。


皆さん、お疲れ様でした。そして案内役の葛岡さん、しんがり役を引き受けてくれた山田さん、三浦さんありがとうございました。